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二度とこの子に手を出したら許さない (向日葵7)

2008年10月30日 22:55

 二人は夜の街を無言で歩いている。

 あの後、徹は地面に転がっている男達から、自動車免許を取り上げた。
「コピーを取ってから近所のコンビニに預けとく。二度とこの子に手を出したら許さない」
 徹の言葉に、男達は血走った目で睨みつめるだけだった。

 コンビニでコピーを取ると、三枚の免許証を落し物だといって、レジのアルバイトに預けた。ついでに買った缶コーヒーを持って、外に出る。
 そのまま二人で歩くうちに、いつしか景色は繁華街から住宅街へと変わった。

 先ほどまでの喧騒が嘘のように、あたりは静まり返っている。車通りも無く、家路へと急ぐ自転車が何台か追い越していくだけである。曇っていて星は見えず、湿気を帯びた風が微かに夏草の匂いを運んできた。

 有為は徹を振り返ろうともせず、肩を怒らせて大股で歩いている。制服のリボン・タイが左に大きく曲がったままなのにも、気付いていない。
 
 徹自身も、何と声を掛けてよいかわからず一歩遅れてついていった。送って欲しいと言われたわけではないが、このまま一人で帰すわけにもいかない。何か言葉をかけようかとも思うが、かといって何と言っていいかもわからない。

 徹は、途中から面倒なことを考えるのをやめにした。ただ有為の後を歩きながら、時に夜空を見上げ、時に有為の背中を眺める。
 二人は結局、一言も喋らないまま有為の家の前まで辿り着いた。
 
 荻原――その家の表札を確かめて徹は安堵した。
 あとはこのコピーを渡せば終わりだ。
 だが、有為は門の前で足を止めると、そのまま動かない。自宅の門灯に照らされた有為の後姿は、癇癪を起こしている子供のようだった。

「何で……」
 有為が不意に振り返ると口を開いた。今日会ってから最初の言葉だった。
 「何で、学校では弱い振りして……」

 咎める口調であった。何か返事をしようものなら、堰を切ったように疑問と怒りとが噴き出すに違いなかった。徹は一瞬迷った後、有為の問いに答える代わりに男達の免許証のコピーを差し出した。

「お父さんに相談するといい。それと」
 ――膝、消毒しなよ。
 それだけ言うと、コーヒー缶と一緒に有為に押し付ける。

 いつ擦りむいたのか、有為の右膝から血が滲んでいる。有為が指で軽くなぞり、その感触に顔を顰めながら顔を上げた時には、既に徹は走り出していた。

 有為の手に、免許証のコピーと缶コーヒーが残った。


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