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序章 運命の輪/ 我が刹那たる命を捧ぐ (運命の輪0)

2008年09月20日 01:04

 木蘭は低く詠唱しながら、宝玉を天蓋の額に近づけていた。

 季節は春、彼岸の中日。
 乳飲み子の頭ほどの大きさの球形の石が、生気の無い天蓋の顔を青白く照らす。むせ返るような血の匂いが、木蘭の見事な銀髪を嬲った。

 父なる無限よ
 母なる永劫よ

「木蘭……もはや宝玉は空だ」 
 天蓋が口を開き、ごぼっと音を立てて赤黒い塊が流れ落ちる。
「死ぬな。天蓋、死んではならぬ」

 我が刹那たる命を捧ぐ
 汝が器を用い

「もういい。ただ己のことを覚えていてくれ」 
 天蓋が、全てを悟りきった表情で微笑む。
 雲から満月が顔を見せ、月影が銀髪の少女と瀕死の男を照らす。
「死ぬな。許さぬぞ」
 天蓋を抱きかかえ、木蘭は祈り続ける。自らも失血で意識が朦朧とする中、全身全霊で祈る。
 
 この男の命を救いたまえ

 天蓋の双眸から急速に光が失われていく。ひび割れた唇が、もう一度だけ動いた。
「木蘭、己のことを覚えていてくれ」
「天蓋、逝くな。死んではなら――」
 
 木蘭の意識は、そこで暗転した。
 
 どこからか野犬の遠吠えが、風に乗って聞こえた。


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