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あんた最近、鼻の下伸ばしてんじゃないの? (月の裏 4-6)

2010年01月04日 01:26

「あんた最近、鼻の下伸ばしてんじゃないの?」
 その日の部活からの帰り道、徹と有為はバス停までの道を並んで歩いていた。

 徹が前川とのスパーを終えた後、保健室で簡単な手当てをして貰って道場に戻ると有為は開口一番、
「藤原先輩は今日は帰った方がいいそうです」
 そう宣言した。

「へっ? 先生も別にそんなことは――」
 言い掛けた徹の足を、思い切り少女の二―ソックスが踏み付ける。
 そこ、高宮との戦いで痛めたところなんだけど――徹は顔をひきつらせたまま、黙って有為の台詞を肯定した。 

 そして「付き添い」の有為と一緒に帰ることになったのだが、二人きりになると何故か有為も口数が少なくなる。会話らしい会話の無いままバス停についたところで、いきなり話しかけてきたのである。

「学園祭と体育祭で少し目立ったからって、いい気になってるでしょ」
 唐突な台詞にしてはひどい言われようであった。

「何だよ、一体」
 さすがに徹もむっとしかけたが、有為はなおもあれやこれやと口にする。
 よく聞いてみると、さっき校門ですれ違う下級生の少女たちに手を振られて、徹も手を振り返したことが気に入らないらしかった。

「ああいう女たちが付きまとってきたからって鼻の下を伸ばしてると、絶対痛い目にあうんだからね!」
 随分な話だが、付きまとわれる経験に関しては有為の方が徹より遥かに上である。そんなものかなあと妙に納得してしまう、もう一人の気弱な自分がいる。

 何とも曖昧な状態のまま話を聞いているうちに、
「特にあたしのクラスの葛原那由なんて、要注意なんだから」
 固有名詞まで飛び出してきた。

「那由ちゃんが?」
 徹はつい反応してしまった。

「……あんた、どうしてあの女のことをファーストネームで親しげに呼ぶわけ?」
 断言しよう。今確かに周囲の気温が数度下がった。

「いや、だって、有為ちゃんのことだってファーストネームで呼んでるわけだし――」
「もしかして、あたしとあのと女が同列なの?」
 有為の周囲が氷結する。徹、口は災いの元という警句が日本にはあるそうだな――何故か赤い髪の少女の真面目くさった顔が、徹の脳裏に浮かんだ。

「と、に、か、く、あたしのことはよくても葛原那由は駄目なの」

 無茶だ、無茶すぎる。これは、今日の授業で出てきた「暴君」というやつでは――
 危険な考えが頭を掠める。しまったと思う間もなく、目の前の少女の瞳が冷たく細まる。

「今また、変なこと考えようとしました? 藤原先輩」
 徹、後悔先に立たずだな――再び赤い髪の少女の顔が脳裏に浮かぶ。

 結局バスが来るまでの間、有為の説教は止むことは無かった。


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