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臭っ! 今日は練習中止で全員部室掃除! (月の裏 4-4)

2010年01月02日 01:04

「臭っ! 今日は練習中止で全員部室掃除! じゃないとあたし、マネージャーやらないからね」
 口にフェイスタオルを当てた有為の顔が歪んでいる。
「押忍!」
 主将の倉田以下、全員の声が揃う。もちろんその中に徹もいる。

 何故こんなことになったのか。
 その日の放課後、徹と倉田兄弟、そして前川は必死に空手部室の掃除をしていた。

 あちこちに散らばったシャワーサンダル。奥の棚に無造作に突っ込まれた襟の伸びたTシャツ。ヘッドギアの山を整理しようとすると奥から出てくる数年前のアイドルのグラビア。
 当初はいつ果てるともなく続くと思われたが、始めてから一時間半、徹たちはようやく拭き掃除にまで辿り着いていた。

「藤原先輩、凄いっすよ。どうやってあの有為を説得したんですか?」
 共に雑巾を手にして床にしゃがみ込んでいる倉田弟が、声をひそめて話しかけてくる。その声が興奮に上ずっていて、ひそめている意味が全くないのが愛嬌といえば愛嬌である。

 倉田弟は無言の徹に対して先ほどから同じ台詞を繰り返しているが、徹の方こそ、あんな会話をしておきながらどういう風の吹きまわしで有為がやってくる気になったのか聞きたいくらいである。
 返答に困りながら、部室の入り口で腕組みをして立つ栗色の髪の少女のことを盗み見た。

 姉の有理には随分慣れたが、こうやって有為を見ると、その美貌にはある意味呆れてしまう。一体どんな親からこんな綺麗な子が生まれるんだろう。街を歩いていてスカウトに声を掛けられたことも一度や二度でない、というのも頷ける。

(そういえば、この子と二人でプールに行ったんだよなあ)
 途端に、黒いビキニを着けた少女の姿がまざまざと甦る。
 あれはいかなる運命の悪戯だったのだろうか。

 しゃがみこんだままで徹が首をひねっていると、倉田弟が必死に小声で自分を呼ぶのが耳に入った。
「藤原先輩、ふ、藤原先輩!」
 だからお前、それじゃあ声をひそめていることにならないんだって――そう言いかけて、徹は口を噤んだ。

 有為の二―ソックスをはいた脚が、目の前にあった。

「……あんた、今いやらしいこと考えてたでしょ」
 頭上からの声が怒りに震えている。徹の脳内に、パイプオルガンの不吉な重低音が鳴り響く。

「いや……あの、その」
「……藤原先輩、顔に出てました」
 横から悲しげに倉田弟が駄目押しする。

「あんたは雑巾がけ百回! わかったわね!」
 倉田兄に勝るとも劣らぬ一喝が、徹を直撃した。


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