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へー、面白いじゃん。やってみれば (月の裏 4-3)

2010年01月02日 01:03

「へー、面白いじゃん。やってみれば」

 そして週が明けた月曜日の昼休み、徹といつものメンバーは学食に集まって話していた。
 楠ノ瀬麻紀が無責任な相槌を打つ横には荻原有理、テーブルの向い側には桐嶋和人と車椅子の杉山想平が座っている。脇には何故か、荻原有理の妹の有為の姿もあった。

「倉田先輩もこんなのに頼らなきゃいけないなんて、本当に可哀そう」
 この暴言が誰のものかは説明するまでもない。こんな台詞を聞いて、場に緊張感が走らないのは自分のキャラのせいなのか、それとも有為のキャラゆえか。
 徹は我が身の置かれた理不尽さに目の前が暗くなりかけるが、ぐっと堪える。

「ま、まあ、新入生が入ってくるまで、あと四ケ月だし」
 その場を穏便に収めようとする桐嶋に対し、徹は首を振った。
「空手部員になるのは覚悟を決めたんだけど、マネージャーの方がなぁ」

 倉田兄から話を聞いて一瞬リタの顔が浮かんだのは事実だが、その案はすぐ自分で打ち消していた。
 リタは急用で一時帰国中だったし、それより話をしようものなら、「徹、なぜ部員ではいけないのか」などと言ってマネージャーどころか空手部員になりかねないのが心配だった。

「倉田先輩、毎日教室に来ては念押ししてくるんだよ」
 こめかみを押さえる素振りをしながら、期待感を込めて楠ノ瀬を見た。が、
「あたし、今月忙しいからパス」 
 容赦なかった。

「合気道部の副将が空手部のマネージャーってのもねえ」
 有理もやんわりと断ってくる。

「お、おれだったら別に――」
「桐嶋、すまん。女子限定だ」
 徹は親友の申し出を断ると、力無い笑顔で伸びたラーメンを啜った。

「それより藤原先輩、もう体育祭で痛めた足はいいんですか?」
 その場の空気を変えようと、今度は杉山が話しかけてくる。ミスター参宮が終わってしばらく、徹が足を引きずっていたのは事実だった。

 そこから話題は自然に体育祭での思い出話に移り、ひとしきり盛り上がってきたところで――

「……ちょっと」
 険のある声に徹はぎくりとした。

「あんた、どうしてあたしにはマネージャーの声を掛けないのよ」
 有為が不愉快そうな顔で徹を睨みつけている。食事がまだ終わってないからとはいえ、右手にフォークを握りしめているのが何ともいえず怖い。

「え、もしかして有為ちゃん、やってくれ――」
「嫌。絶対に嫌だから」

 徹の言葉を最後まで言わせずに答が返ってきた。
「有為」
 たしなめる有理の横で、杉山が頭を振りながら眼鏡の弦を指で押し上げる。

(何だよこの会話……)
 肩を落とす徹の横で、楠ノ瀬が耐えきれず吹き出していた。


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