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空手部に? 俺がですか? (月の裏 4-2)

2010年01月02日 00:53

「空手部に? 俺がですか?」

 教室から連れ出されて十分後、徹は空手部室で三人の男に取り囲まれていた。

 正面のパイプ椅子に腰を下ろしているのは倉田大悟と名乗った、先ほどの上級生である。本人の説明によれば空手部の主将を務めているらしい。
 徹の左側に立つ背の高いひょろりとした細目の男は、同じく三年生で副将の前川要。右に立つ比較的小柄で童顔の男が、一年生の倉田洋平――主将の倉田の弟だった。

 針金ハンガーに掛けられた何着もの空手道着と色とりどりの帯。そして部屋の隅に転がる大小のキックミットとヘッドギア。そこかしこから醸し出される何とも言えぬ匂いに徹は僅かに眉をひそめながら、直立不動で立っていた。

「お前も知ってる通り、参宮学園の生徒はそれほど多くない。残念ながら我が伝統ある空手部も、ここ数年は存続の危機にあった。しかもだ」
 そこで倉田兄の口元が忌々しげに歪む。

「荻原有理の入学以降、武道に興味を持つ生徒の殆どが合気道部に流れた」
「合気道だと手も握れるし」
 兄の気持ちなどお構いなしに気楽な口調で続けた弟を、兄がもの凄い形相で睨みつける。

「で、でも、それで空手部と俺にどんな関係が」
 言い掛けた徹の言葉が、副将の前川の言葉に遮られた。
「高宮だよ」

(あ……)
 徹は言葉を呑みこむ。

 体育祭、そしてその後の戦いで徹に敗れた後、同じクラスの高宮武は転校した。
 敗れた方が学園を去る――そんな条件があったことは高宮と徹以外に知る者はいない。けれども、高宮のプライドの高さを考えれば、真相に辿り着くのは決して難しいことではなかった。

「運悪く高宮の他にもう一人、部員が減ってなぁ。これじゃあ安心して引退も出来ん」
 倉田兄が大袈裟に嘆息すると、座ったままで徹の方に顔を近づけた。がっしりとした身体の下で、パイプ椅子がぎしりと軋んだ。

「藤原、お前には責任がある。空手部に入れ。そして」
「いや、ちょっと待ってく――」
「まだ、話は終わってない!」
 部室の窓ガラスを震わす倉田兄の一喝に、徹は首をすくめた。

「もう一つだ」
 倉田兄がぎょろりとした目で徹を睨みつけながら、人差し指を立てた。
 そのまま節くれだった指を徹の眉間に突き付ける。
「女を一人、マネージャーとして連れてこい」

「へっ?」
 唖然とした徹に、再び雷が落ちた。
「藤原ぁ、空手部員なら返事は押忍だ!」

「…………お、押忍!」


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