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それなりに月の裏

2009年12月21日 23:21

 こんばんは。

 今月はこれで押し通してしまおう!とばかりにまたも番外編です。
 設定時期的には桜12裏の翌日、というか桜13という感じです。宜しければどうぞお読み下さい。

(桜13)

「み、みんな、葛原那由ちゃんを紹介するよ」
「みなさん、宜しくお願いします」
 翌日の昼休み、徹とリタ、そして楠ノ瀬は、桐嶋和人と葛原那由の連と一緒に学食で食事をしていた。

「よ、宜しく」
 徹たちは、目の前の小柄な少女と桐嶋との組み合わせに何とも複雑な感想を抱いたが、それを言葉に表すことなく同じ挨拶で答える。

 先日のリタと那由との気まずい流れが気になっていた徹は、再び微妙な空気が漂い始める前に自分から率先して話しかけることにした。
「那由ちゃんって、バレエでも習ってそうな髪型だよね」
 我ながら安易かと思いながらも、殊更に明るい声を出す。

 だが那由は表情一つ動かさなかった。そもそも切れ長の瞳が徹に焦点を合わせているかどうかさえ、自信がない。
「……えっと、あの、葛原さん」
 卑屈と判っていても、呼び方を言い変えてみてしまった。

「な、那由ちゃん、藤原の話は、き、聞いてた?」
 桐嶋も太い眉を寄せると、おろおろした調子で横から言葉を掛ける。

「お前も、学園のナンバーワンを目指すつもりか」
 そこでリタが徹たちの言葉など全く聞かなかったかのように、会話に割り込んでくる。
「もちろん、そのつもり」
 ようやく那由の薄い唇が動いた。

(……何でリタには答えるんだよ)
 恨みがましい視線を、那由本人でなく桐嶋に投げかける自分が何とも情けない。

「あたしと瓜谷先輩もナンバーワンを目指すから、じゃあみんなライバルだね」
 楠ノ瀬が楽しそうに続けた。そのまま男たちの存在など無視して少女たちだけで会話が進んでいく。
 徹と桐嶋は、溜息混じりに視線を交わし合った。

(桐嶋、お前、この展開何とかしてくれよ)
(ふ、藤原こそ、那由ちゃんにな、何かしたのかよ)
(そんなわけないだろ、そもそもあの子が――)

 那由に連を申し込まれたのを断った後ろめたさから、思わず徹のリアクションが大きくなる。
 つい、持っていたフォークを横に振ると、横に座っていたリタが僅かに眉をひそめた。

「男二人で、内緒話はよくないなあ」
 そこで楠ノ瀬がテーブルの向い側から、覗き込むように前屈みになって話しかけてきた。
 ブラウスの第二ボタンまで外した隙間が否応なく徹の目に入った。

 確かに大きい――そう思いかけたのもつかの間、
「藤原さん、不潔です」
 那由の言葉に徹は耳まで赤くなった。

「いいんだって那由ちゃん。徹ちゃんなら見えても」
 楠ノ瀬が年に似合わず妖艶に微笑むと、ウェーブのかかった茶色い髪を掻き上げる。
「葛原那由、言っておくが徹はそんな男ではないぞ」
 リタが不快げにターコイズブルーの瞳を那由へと向ける。

「ふ、藤原、よかったな」
 桐嶋が心底羨ましそうな口調で徹を見た。
 自分たちも会話の輪に入れて、ようやく安堵したようであった。
 
(……結局、こういう役回りか) 
 徹は、今度こそ大きな溜息をついた。


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