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春の記憶 如月の夢 /幕間2

2009年11月22日 22:09

 赤い髪の少女はベッドから身を起こすと、枕元の時計を確認した。
 寝入ってからまだ二時間も経っていなかった。
 急いでベッドライトを点けると、枕元に置いたノートに見た夢を書き留める。

 どこかに宝玉の謎を解く鍵があるはずだ。
 あの銀髪の女は誰なのか。
 だが掬った手の指の間から水が漏れるように、夢の中の記憶は書き留めるそばから薄れていく。

「……何故だ。何故だ」
 消え入るような声はうわ言のように続き、
 そして不意に、頭を壁に打ちつける音へと変わった。

「何故、思い出せない」
 少女は小さく呻くと、傍らのベッドで横たわる徹を見た。

 ベッドライトの明かりの下、徹の頬から首筋にかけて鋭い鉤爪で引き裂かれた赤い傷が出来ていた。線などという生易しいものではない。蚯蚓腫れのように皮膚が赤黒く盛り上がっている。
 傷跡は浮かんでは消え、そして消えてはまた浮かんだ。
 
 早く起こさないと取り返しのつかないことになる。
 焦燥感に駆られて伸ばした腕が、途中で止まる。これが、この悪夢こそが宝玉の謎を解くための試練だと判っていた。徹も少女も、ともに覚悟の上だった。

 だが――それにしても、あまりに残酷な試練だった。

 その時、徹の口が小さく動いた。咄嗟に耳を近づけた。
「……必ず、必ずリタの弟を」


 少女の顔が歪み――
 嗚咽と共に、再び部屋に鈍い音が響いた。


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