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3人の連 (物語について18)

2009年06月17日 01:05

 前回の「スールと連」(物語について17)にて、如月の宝玉は当初3人組バージョンでしたと書いたところ、早速「それも見てみたい」とのご要望を頂きました。
 言って頂けるうちが花(?)というわけで、ご要望頂いた同志の方に謹んで端切れをアップ致します!

 もっと掲載量を多くして、「月の裏で……」的に連載する選択肢もあったかもしれませんが、作者的には本内容は「下書き」に近く、恥ずかしさも本編以上です。

 このため今回は「メイキングオブ如月の宝玉」の位置づけで、以下に「端切れ」を添付します。
 本編ご覧の方であれば、このシーンがどのように削除・転用・改編されたかがお判りになるかもしれません。

 それではご興味ある方は、続けてご覧下さい。

   * * * * * * * *

「金田さん。組む相手が決まってなければ、もう少し話をさせて貰えませんか」
 四月二十一日の放課後、リタと三年二組の教室を訪れた藤原徹は、丁寧な口調で話しかけた。

 金田実優の方も、昨日この二人が来たことは覚えていた。何と言っても一人は入学式であれほど目立ったリタ=グレンゴールドである。
 だが、男子生徒の印象は薄かった。こんな子が自分の一年下にいたかさえ自信が無い。

 申し込みに来たわけではなく「組むかどうか迷っている」という口調に引っかかるものもあったが、リタ=グレンゴールドには興味があった。
「あたしのどこが気に入ったの?」
 質問は、自然とリタに向けられる。

「昨日話をして、もしかしたら僕らと波長が合うかもしれないと思ったからです」
 徹は金田実優を正面から見て答えた。

(波長ねえ……)
 一方の金田実優は、ショートカットの形のよい頭を軽く傾げる。
 礼儀正しいが物足りない――そんな印象を与える台詞である。実のところ、金田実優は既に二組の連から申し込みを受けている。他の二組の顔を改めて思い浮かべていると、不意に横から声がした。

「実優さん。俺らと組もうぜ」
 徹と金田実優が振り返ると、そこに高宮武と荻原有為が立っていた。

「実優さん、去年はお互い楽しかったな。今年こそ一番になろうぜ」
 高宮は徹のことなど眼中に無いかのように、金田実優に話しかけてくる。
 むっとした徹は自分達が先に話していると抗議したが、返ってきたのは一瞥だけだった。

 悔しいことに金田実優自身の関心も高宮と有為の方に移っている。自信に満ちた者が纏う磁力とでも言うのだろうか、三年生の教室にあっても高宮たちは周囲の視線を独占していた。

 注目されていることなど気にも留めず、有為が続ける。
「金田先輩。先輩はゴズペルを習ってるって聞いたんですけど、私も凄く興味あるんです。今度連れてって貰えませんか」

「あの、金田さん……」
 控えめに話しかける徹に、高宮は歯を剥き出した。
「お前、ちょっとどいてろ」
 そのまま徹を見下ろすように顔を近づける。

 一方的な高宮の言葉に押し黙る徹の後ろで、リタが毅然とした声を上げた。
「お前達は失礼だ。そもそも選ぶのは彼女の方だろう」
 これに対し、有為が冷笑で返す。
「リタ達こそ、手当たり次第に声を掛けてるって評判よ。その方がよっぽど失礼じゃない」

「真剣に考えているだけだ。僕らは留学生と転校生で情報が少ないから――」
 ようやく反論を口にした徹に対し、高宮が鼻でせせら笑った。
「それはお前らの都合だろ。連を申し込む気がなければどっか行けって」
 そう言って徹の肩を突き飛ばしてくる。思わず徹は膝をついた。

 周囲の視線が徹たちに集中している。
 だが止めようとする者は無く、むしろこの後どうなるのか見てみたい。そんな好奇の視線だった。

「徹に何をする」
 すかさずリタが二人の間に割って入った。徹を庇う様に足を大きく開き、高宮を押し返そうとする。
 青い瞳の奥には怒りが渦を巻いていた。
「へーえ」
 高宮が意味ありげに上から下までリタを見ると、べろんと唇を舐めた。

「リタ……」
 自分は大丈夫だから――そう言いかけた徹だったが、
「年下の子に助けられるなんてカッコ悪い」
 有為の呆れた口調に耳まで赤くなった。立ち上がりながら、思わず拳を握り締める。

「やるのか、お前」
 自らの絶対的優位を確信している高宮の言葉には、挑発が混じる。
「藤原は転校生で情報が足りないらしいから断っとくと、俺は強いぜ」
 徹は高宮の皮肉には答えず、無言でリタの前に出た。

「徹……」
 耳元でリタが囁く。左手を軽く徹の背中に当てる。
 高宮は顔を歪めて笑いながら、軽くステップを踏んでいる。

「ねぇ、喧嘩はやめてもらえない?」
 その時、金田実優のうんざりした声が掛かった。ショートカットの整った顔を顰めて溜息をついている。
「高宮君も相変わらずね」
 そう言うと今度は、徹とリタに向き直った。
「あと、悪いけどあたしは貴方達とは組まない」

「ど、どうして――」
 思わず声を上げる徹に対し、金田実優は言葉を継いだ。
「あたし、礼儀正しくて控えめなタイプより、少し自惚れてるくらい元気がある方が好きなの」

 そこで一呼吸置くと、赤い髪の少女へと目を向けた。
「グレンゴールドさん、あなたには興味あるけど悪く思わないでね」
 リタは静かに頷いた。教室のあちこちから安堵とも失望ともつかぬ息が漏れる。

 一人徹は下を向いていたが、突然リタに向き直った。
「リタ。御免。僕のせいでチャンスを逃して本当に御免」
 そう言って年下の少女に思い切り頭を下げる。有為が、本当にカッコ悪い――そう呟くのが聞こえたが構わず頭を下げ続けた。だが、
「私は気にしていない」
 リタはきっぱりそう言うと、赤い髪を掻き上げた。

「でも……」
 なおも言葉を言いかける徹に、それまで黙って見守っていた隣席の上級生が声を掛けた。
「私は、優しくて控えめなタイプもいいと思うよ」
 徹がその声に顔を上げると、黒髪を長く伸ばした笑顔があった。 

 金田実優と同じく最終リストの中に入っていた三人の少女の一人、佐倉望だった。

「……佐倉さん」
 思わず徹が声を上げると、
「名前覚えてくれてたんだ」
 佐倉望はふわりとした笑顔になった。活動的なショートカットの金田実優とは対照的に、腰近くまでかかる漆黒の長い髪が目の前で揺れている。

「佐倉さん。組む相手が決まってなければ、もう少し話をさせて貰えないでしょうか」
 徹は反射的に、先ほど金田実優に告げたのと同じ台詞を繰り返した。
「おいおい、手当たり次第かよ」
 聞えよがしに肩を竦めて見せる高宮を無視して、改めて佐倉望を眺める。

 同年代の少女と比べて小柄な身長に、ふっくらとしたプロポーション。
 どのクラスにもいるおっとりとしたタイプで、特に目立つこともない普通の子。
 その実、一度意識してしまうと何故かその居場所を探してしまう。

(木漏れ日の匂いだ――)

 徹が傍らのリタを見ると、ひどく真剣な表情になっていた。
「きれいな黒髪だ。触れてみても構わないか」
 赤い髪の少女はそう言いながら返事も待たず、自分より小柄な佐倉望の頭を撫でる様に触れた。

「グレンゴールドさんは、藤原君と違って積極的なんだね」
 佐倉望は可笑しそうに目を細めた。

 リタは、珍しく逡巡しているようだった。
「望。お前はナンバーワンの連を目指しているか」
 リタにしては歯切れ悪くそう問いかける。

「グレンゴールドさんには、そこが重要なの」
 佐倉望は質問に質問で答えると、また可笑しそうな表情になった。
 黒髪には天使の輪が浮かび、望が話すたびに微妙にその形を変える。

「私には……私には、宝玉が必要だからだ」
 リタがそう口にすると、佐倉望はふわりとした表情で告げた。
「私も叶えたい夢があるんだ」
 それを聞いた瞬間、徹は探していたピースが音を立てて嵌った気がした。

「リタ、佐倉さんに連を申し込もう」
 リタは突然の言葉に一瞬目を見開いたが、直ぐに見慣れた意志の強い表情に戻った。
「私もそう思う」
 二人は頷き合って望の前に立った。リタが白い手を差し出す。

「望、お前の一年を私達に預けて欲しい」
 後ろで高宮と有為がなおも何か言ったが、徹は気にならなかった。じっと年上の少女の瞳だけを見る。
 だが、佐倉望は少し考える素振りすると首を横に振った。息を詰めていた徹の肩が落ちる。

(やっぱり駄目なのか――)

 見る見るうちに表情が暗くなる徹に目を細めながら、望は答えた。
「ねえ、連では一方的に預けたり預かったりの関係じゃないの。いつでも三人で力を合わせるんだよ」

 暖かい声であった。

 徹が少女の言葉の意味を量りかねている傍らで、リタは直ぐに言葉を継いだ。
「では言い直そう。望、三人で力を合わせよう」
 再びその手を前に出す。

 はっと気付いた徹が慌てて佐倉望を見ると、望は少し恥ずかしそうに立ち上がった。
 リタの手を握る代わりに自分の手を膝の上に揃えると、年下の二人に向かって深々と頭を下げる。
 徹たちの目の前で、少女の白い項から艶やかな黒髪が流れ落ちる。

 少女からは、確かに木漏れ日の匂いがした。

「不束者ですが、これから宜しくお願いします」
 佐倉望の声が、徹の耳朶を打った。


   * * * * * * * *

 「端切れ」は、以上です。お読み頂きありがとうございました!



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