スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

俺、先輩のために何でもします (桜4)

2008年10月04日 00:27

 前途多難な予感に徹が溜息をついているうちに、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。徹が、背伸びをして立ち上りかける。
 と、いきなり一年生が数人、教室に雪崩れ込んで来た。脇目も振らず荻原有理の席まで歩み寄ると、先頭が大声を張り上げた。
「一年三組の山本雄一です。荻原先輩、自分と連を組んでください」
 
 すぐ後ろの男が押しのけるように前に出る。
「自分は一年一組の北里剛史です。先輩の噂は入学前から聞いてました」
 順番を待ちきれないように、後ろの方からも別の声が掛かる。
「荻原先輩。俺、先輩のために何でもします」

 有理の席は既に五、六人の一年生に取り囲まれていた。気付くと教室には他にも一年生が姿を見せ、徹のクラスメイトに声をかけている。
(なるほど、こういうシステムなのか)
 徹は、宇田川や瓜谷の説明をようやく実感した。

「だーめ駄目。どうせあたしと組んだら、すぐやらせてくれると思って来たんでしょ」
 ぎょっとして振り返ると、楠ノ瀬麻紀がニキビ面の男子生徒を、片手であしらっていた。
「あたしは理想高いの。悪いけど他あたって」
 肩を落とす一年生を横目に、楠ノ瀬が意味深に笑いかけてくる。
「徹ちゃんが一年生だったら、よかったんだけどなあ」

 予想外の言葉に徹が顔を赤くすると、楠ノ瀬はその反応に満足げな表情を浮かべて教室を出て行った。再び有理の方を見ると、こちらもあっさり勝負あったようで、一年生たちがすごすごと帰るところだった。
 
(有理は、誰と組むんだろう)
 周囲ではまだ、クラスメイトたちと一年生の駆け引きがあちこちで続いている。だが、自分目当てにやって来た一年生は皆無だった。

(ま、転入生のところに初日から来る子はいないか)
 人より特に目立つわけでもない。敢えて他人との違いを探せば日本舞踊くらいだが、これとてインパクトがあるとも思えず、しかも実態は古武術である。女子高生が興味を持つとは到底思えなかった。

 徹は、一年生向けの冊子に書いた自己PRの出だしを思い出してみた。
 藤原徹――四月に転校してこの学園にやってきました。君らと同じ新入生のつもりで、全力投球しようと思います。一緒に楽しい学園生活を送りましょう。

 改めて思い返すと、我ながら冴えない内容だった。
 徹は首を振ると、カバンを持って立ち上がった。


トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://waitingforyouguys.blog7.fc2.com/tb.php/11-aa00369c
この記事へのトラックバック


最新記事


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。